リモートワーク普及でデジタルノマドに世界の国々が注目
自宅やコワーキングスペースなど、職場に行かなくても仕事ができる「リモートワーク」が急速に普及しています。安定した高速接続できるインターネット環境、パソコンを開いて仕事ができる落ち着いた環境のスペースなどがあれば、世界どこでもデジタルノマドは仕事をしながら生活することが可能です。
そんなリモートワーカーを対象に、長期滞在できる「ビザ」を発給する国・地域が続々と増えています。これまで、就労ビザは現地に勤務先がある場合のみだったり、ビザがないと最大でも半年といった短期間の滞在に限られていたりと制限されていたので、とても画期的なことです。リモートワーカー向けに発給される「デジタルノマドビザ」とはどういったものなのか、取得条件や提示書類など、さらにデジタルノマドビザを発行する主な国・地域についても紹介します。
「デジタルノマドビザ」発給の主な条件は?
まず「ビザ」(査証)とは、仕事や旅行などで現地滞在する際に必要な、いわゆる入国許可証です。ただすべての国・地域で必要なわけでなく、例えば日本国発行のパスポートの場合、3ヶ月程度の観光目的であれば、ビザなしで入国できる国・地域が多くあります。実際にノマドワーカーで、観光ビザのみで滞在する人も少なからずいます。
一方で、近年のテレワークの普及により、半年や1年といった長期間でリモートワークをしながら滞在できる「デジタルノマドビザ」を発行する国・地域が増えています。ただ、誰でも取得できるわけではなく、それぞれの国・地域で取得条件があります。ほぼすべての国・地域で必要なのは「滞在国・地域以外での安定した収入がある」「滞在国・地域での居住場所を確保済み」「滞在国・地域で有効な健康保険に加入している」などです。
「デジタルノマドビザ」を発給する主な国・地域ベスト10
いわゆる「デジタルノマドビザ」に相当する滞在ビザを発給している国・地域はすでに40ヶ国・地域を超えています。その中から、主な10ヶ国をピックアップし、それぞれの場所が持つ魅力、デジタルノマドビザの発給方法などについても紹介します。
1. エストニア
北ヨーロッパのIT先進国エストニアは、世界でいち早く外国人が電子居住権を取得して起業できるプログラム「E-Residency」を導入。2020年にはデジタルノマドビザの発給も開始しました。場所を問わないビジネスを経営もしくは国外で雇用契約するリモートワーカーが対象。過去6ヶ月で最低3504ユーロの収入証明などが条件で、1年の滞在が可能です。
Official Website: https://www.e-resident.gov.ee/nomadvisa/
2. マルタ
地中海に浮かぶ小さな島国マルタは、温暖な気候や英語が通じる、安定したWi-Fi環境、EU圏で最も物価が安いことなどからノマドに人気があります。マルタの「Nomad Residence Permit」プログラムを利用することで滞在1年、さらに延長も可能です。対象は国外で雇用契約するリモートワーカーで、月額収入2700ユーロ以上、健康保険への加入が必須。
Official Website: https://nomad.residencymalta.gov.mt/
3. クロアチア
バルカン半島にある東欧の国クロアチアは、他のヨーロッパ諸国との行き来もしやすく、美しい海岸や旧市街など観光要素も充実。デジタルノマド向けの一時滞在許可を2021年より認めていて、滞在期間は1年(延長可)、月2232ユーロ以上または年26790ユーロ以上の収入と健康保険の加入が必要です。クロアチア現地でのみビザを取得できます。
Official Website: https://mup.gov.hr/aliens-281621/stay-and-work/temporary-stay-of-digital-nomads/286833
4. ジョージア
アジアとヨーロッパの境に位置するジョージアは、以前から滞在費の安さ、治安の良さ、独特の文化などでノマドに人気。デジタルノマドビザのプログラム「Remotely from Georgia」では6ヶ月から1年まで、2000USドル以上の月収と健康保険への加入といった条件は、他国よりハードル低め。日本を含めた世界100ヶ国近くの国籍を有する外国人が対象です。
Official Website: https://georgia.travel/en_US/article/remotely-from-georgia
5. ルーマニア
東欧の国ルーマニアは2022年1月からデジタルノマドビザの発給を開始。発給条件は、国外で雇用されているリモートワーカーで、過去6ヶ月で(ルーマニアの平均月収の3倍にあたる)月収3300ユーロ、宿泊施設の証明、犯罪経歴証明書などで、1年間の滞在が許可されます。物価が安く、高速ネット環境も整備済みなのでノマドが最も注目する国です。
Official Website: https://evisa.mae.ro/Home?lang=en-US#
6. ポルトガル
ポルトガルには一時滞在ビザ「D7 passive income visa」に加え、フリーランスや起業家向けの移住ビザがあります。いずれも1年有効、その後5年まで更新でき、さらに永住権の申請も可能。不動産収入または自社収入、月収600ユーロ以上などが発給条件です。マデイラ島では「Digital Nomads Village」プロジェクトがあり、ノマドが集う場所で一躍有名に。
7. ギリシャ
観光国としても人気が高いギリシャで2021年10月に導入されたデジタルノマドビザが「Greece digital nomad visa for non-EU/EEA citizens」です。滞在期間は1年、最長3年まで延長可能で、国外雇用または国外にある自社企業がリモートワークを行うこと、月3500ユーロの収入などが条件。ノマドに欠かせないネット環境が整い、物価が安いのも魅力です。
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8.メキシコ
メキシコは美しいビーチや温暖な気候で人気が高く、観光ビザで6ヶ月まで滞在でき、さらにノマドに最適な1年有効の一時滞在ビザもあって3年まで更新可能です。国外拠点の会社でリモートワークもしくは場所に依存しないビジネスを経営する人が対象。過去6ヶ月で月1620USドル以上または27000USドル以上の残高証明が必要です。
Official Website: https://consulmex.sre.gob.mx/leamington/index.php/non-mexicans/visas/115-temporary-resident-visa
9.ドバイ
中東のUAEで最大の都市ドバイでは、デジタルノマド向け「Dubai Virtual working programme」を実施。国外企業の社員および自営業者が対象で、5000USドル以上の月収と連続3ヶ月の給料証明、健康保険への加入などが必須です。1年滞在できるのに加え、所得税の支払いが不要というメリットも。ビザ取得者は家族同伴も認められています。
Official Website: https://www.visitdubai.com/en/business-in-dubai/travel-to-dubai/visas-and-entry/work-remotely-from-dubai
10. スリランカ
サーフィン天国であるスリランカは、以前からノマドに人気が高い場所です。最近、国を挙げてノマド誘致に力を入れ始める動きがあり、デジタルノマドビザの発給開始も発表されました。国外企業の社員および自営業者が対象で、滞在は1年間。発給条件などは未定です。懸念のネット環境やコワーキングスペースなども今後、急速に整備されるでしょう。
Official Website: https://www.immigration.gov.lk/web/index.php?lang=en
デジタルノマドビザの発給でやや遅れているアジアでは、もともとノマドに人気が高いタイで、富裕層年金受給者をはじめリモートワーカーにも最長10年滞在できるビザの発給が本格的に検討されているとの動きが見られます。さらに、ノマドに人気のバリ島があるインドネシアでも、5年間の滞在が許可されるノマド向けビザ新設の動きも。アジアは日本から近く、物価が安い上にネット環境も整備されているので、待ち望むノマドも多いでしょう。
デジタルノマド向けビザ発給はメリット大でしかない
デジタルノマドビザを発給する国・地域がこの数年で増え続けています。その理由は、世界中でリモートワークが普及してきたことが、まず1つ。そして、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大で多大な影響を受けて観光需要が落ち込み、その代わりにと長期滞在かつ滞在費などの収入が確実に見込めるノマドが着目されています。ノマドにとっても、ビザ発給で長期滞在が可能になった国・地域が増える、選択肢が増えることは大きなメリット。すでに発給検討中の国・地域もいくつかあるので、今後ますます増えていくでしょう。